淫靡な夜

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 やれやれと語尾に付け加え、腰を掴んでいた両手を湯から出してバンザイした。 「安田課長にこれ以上、手が出せないようにこうしていますから、ビール呑ませてください」 「……わかった、それじゃあ――」  ぐびびっと口に含み、零れない様に下田の唇を塞いだ。 「んっ、んんっ…ん、んぅ」  ゆっくり流し込んでやったら、美味そうに喉を鳴らしながら上手に呑んでくれる。  最後の一口分を、内心安堵のため息をついて流していたら、唐突に後頭部を鷲掴みされた。  がしゃんっ!  その衝撃で手に持っていたビールが、浴槽にぶつかって床に転がり、ビールの中身がぶちまけられていく。 「!!」  やられたと思った時には既に遅く、噛みつくようなキスを、押し付けるようにされてしまい…… 「はぁ…あぁっ! やめ…んぐっ――」  抵抗しようとじたばたしたら、素早く両手を押さえられ、更に覆い被されてしまった。  大きな身体が私の動きを封じるように跨り、アヤシげに腰を押し付けてくる始末。これ以上、煽ってほしくない。触れられたら、私は―― 「大人しくしてくれたら、この手をはずしてあげますよ。それともまた縛られたままスル方が、安田課長は興奮しますか?」 「……んなの、そんなのイヤだ。お前に触れたい、下田」  掠れた声で告げると、掴んでいた両手首の力を抜いてくれた。解放された左手で下田を引き寄せながら、反対の手は水面に沈ませる。下田自身に触れるために。 「ふふ、コレがほしいんですね安田課長?」 「これだけじゃない。カゲナリの全部が欲しい」  今度は自分から、噛みつくようなキスをしてやる。私の想いに応えるように、下田が舌を吸い上げながら絡めてきた。  もう恋なんてしないと思っていた――私のとって恋とは、毒のようなものだから。夢中になれば堕落させ、自分を蝕んでいくそれが、怖いものだと知っていた。  だけどこんな風に求められたら、拒絶出来るワケがない。誰かに愛される気持ちに溺れてしまいたい。  この夜、一晩かけて下田に愛された。  愛されながら、急速に愛してしまいそうになる自分の気持ちにブレーキをかけつつ、それでもゆっくりと下田のことを愛してあげようと思った。
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