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「あのさ赤ちゃんの話だけど大事なことだから、後でゆっくり話そう。ちゃんと連絡するからさ」
私が叩いてしまった手を撫でながら彼女を宥めて、会社の外に追い出した。
「あの……安田課長、僕は――」
「おめでたい話じゃないか、良かったな」
「でも僕が好きなのは、安田課長だけなんですっ」
下田のあまりの言葉に、気持ちの矛先をどこに向けたらいいのか分からず、カバンの持ち手をぎゅっと握りしめた。
「そんなことを言って、私を困らせたいのか。お前は……」
「そんなんじゃないです。何か、タイミングが悪かったとしかいいようがなくて」
「確かに、間が悪かったな今回は。だったら私から、いいことを提案してやるよ」
苦笑いしながら下田の肩を叩いてやる。
「いいこと?」
「ああ。私たちの関係を断ち切るための、最後にしようじゃないか。お昼休み、屋上を人払いしておいてやるから来てほしい。待ってるから、カゲナリ」
愛しげに名前を呼んでから、逃げるように背中を向けた。
一緒に出かけるハズだった外出をその準備のために、ひとりでさっさと出発したのだった。
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