第22話 【欲しいものは、…】

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「喜んでない!本当に今夜は無理!」 「ダメ」 「ダメって!……」―――――マジですか? 明らかに私をからかって、意地悪気な笑みを浮かべる彼。 フロントガラスから差し込むのは帰路を照らす澄んだ月明かり。 まどろむような静けさの中に二人の声が溶け込んでいく。 今、私の隣にはあなたがいて、 あなたの優しさと温もりを感じる。 それだけで満たされて、胸がいっぱいになる。 あなたがいない未来なんて考えられない。 「先生……」 「ん?どうした?」 「今夜、乾杯しようよ。初めて先生の家に家政婦として迎え入れてくれた、あの夜みたいに」 街の明かりが映し出す彼の横顔を見つめ、零れるような笑みで頬をほころばせる。 「そうだな、あの日と同じようにシャンパンで乾杯しよう。……麻弥、ありがとう」 彼は私の手を握り、水面に風が波紋を描くような静かな笑みを浮かべた。 きっと、 未熟だった頃の辛い過去も、あなたに恋をして突き当たった葛藤も苦しみも、全てはこの日のために与えられた試練なんだ。 今日という日を忘れずにいたら、一緒に過ごす時間の大切さを忘れずにいたのなら、この先何があっても乗り越えられる。 先生と咲菜ちゃんがいてくれるなら、他には何も要らない。何も怖くない。 「……ずっと私の側にいてね」 「ああ、ずっと側にいる。約束する」 溶け合うように重なる手の温もり。 「先生、愛してる」 「俺も愛してる。麻弥」 そこに雪菜さんの存在があっても、あなたの『妻』にはなれなくても、心の孤独に打ち勝ってみせる。 もう迷わないと、そう決めたから。 愛してる…… これからもずっと、あなただけを…… 私は愛しい人の大きな手を握り返し、夜空に浮かぶ凛とした月に永遠の愛を誓った――――。
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