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《荒川河川敷 24時02分》
生暖かい風が、顔を撫でる。
川の周りなだけに、他の場所より気温は低いが、それでも少年達は汗だくだった。
バイクのエンジン音と少年達の罵声が混ざり合い、風に流される。
その中でも立ち上がっているのは僅かだが、いよいよ終わりそうな気配が出ていた。
口元から血を流し、返り血のこびり付いた拳を握りながら、金髪の少年が叫ぶ。
「おい、ゆう!残ったこいつが頭だ!この町でかいツラして歩かせなくさせるぞ!」
ゆう、と呼ばれた少年はそれに答える。
「あったりめーだこら!2度と人に見せらんない顔にしてやるよ!」
リングを付け直し、首を鳴らすのと同時に、頭と呼ばれた少年と隣にいた少年も叫んだ。
「なめたこと抜かすんじゃねえぞクソガキ!ぶっ殺してやるよ!」
「臭い口でゴタゴタ喋んなくていいから、さっさとかかってこいや!」
挑発に挑発で返す。
フラフラの状態になりながら叫ぶ相手に、金髪の少年が鼻で笑った。
「くせー口だとよ、お前ちゃんと歯磨いてるか?」
「よし、こいつら潰したら次はお前な」
「上等だこら、その低い背もっと縮めてやるよ」
「んだとゴラァ!」
「やんのかあぁ!?」
「ぴよぴよ鳴いてんじゃねーぞクソガキぃ!」
置いてけぼりを喰らった少年達が怒鳴る。
耐えかねた『頭』の方が走り出す。
徐々に距離を詰められたのに気付き、ゆう達は相手に向き直った。
もうすぐ飛び蹴りの間合いに入る、そんな中でも金髪とゆうは笑っていた。
不気味に、ニタニタと、ピエロのように笑顔が張り付いてる。
そして、小さい声で、隣にしか聞こえないであろう声で、同時に呟いた。
「ぶっ殺してやる」
~数分後~
「お前ら次ここら辺でそのツラ見せたら、こんなもんじゃすまねえからな」
金髪の少年が、ぐったり倒れてる『頭』の横に立って言う。
片目は腫れ、ほっぺには切り傷を作り、うっすら開いた口の中は赤黒く染まっていた。
それを尻目に、金髪はポケットから黒いパッケージをした箱を取り出す。
一本抜き取ると、ポケットを探りながら1つ溜息をつき、ゆうを呼んだ。
「おーいゆう、ライター貸してくれ。どっかいっちった」
目を上げ、ゆうの方に目を向けると、そこには倒れた少年に馬乗りになってるゆうがいた。
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