11人が本棚に入れています
本棚に追加
そして時間が過ぎ、一向に雨が止む気配はなくて、むしろ徐々に強くなっていく。
今日の花火大会は田舎にしては規模が大きくて、県内外から足を運ぶ人達も大勢いて、だから延期かどうかの判断もかなり慎重なはずなのに、今、花火大会延期のお知らせを伝える車がゆっくりと走っている。
延期に、なっちゃった。
毎年花火大会の日は天気が危うくて、地元では『雨呼び花火』なんて言われてて、それでも延期になることなんてそうはないのに。
なんで今年に限ってこんな大雨なのよ。
大夢と手をつないで、花火、見たかったな。
今日の為に買った浴衣姿を、大夢に見て貰いたかったな。
こんな大雨じゃ、浴衣は変だよね。
時間がかかると思って既に髪はアップにして、浴衣に合わせて買った髪飾りもつけてたけど。
飾りは外した。
大夢に見て貰いたかった。
可愛いって言ってもらえたかもしれないのに。
雨の馬鹿、延期を決めた人の馬鹿。
八つ当たりしても仕方ないのに、私はこの怒りなのか悲しいなのか不明なぐちゃぐちゃな気持ちの持っていき場所が分からなくて、雨の馬鹿って、何度も呟いてしまった。
諦めなきゃいけないのに諦めきれない私がいる。
雨の馬鹿。
延期決めた人の馬鹿。
私の馬鹿。
延期になった時の過ごし方を考えなくちゃと思ってたのに、心のどこかで延期にならないって期待があって、ちゃんと考えていなかったんだ。
どうしよう。
どうしたら大夢は喜んでくれるのかな?
大夢に延期の事、伝えなくちゃだよね。
電話どうしよう?
そう思った時、大夢からの着信。
どうして大夢ってこんなにタイミングがいいのかな?
まるで全部分かってるみたいだと、不思議な気持ちになった。
最初のコメントを投稿しよう!