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身体ごと倒された床は固かった。押さえつけられた手が痛くて、彼女は顔をゆがめてもがく。両手を頭の上で押さえられているのに、彼は片手で余裕でいる。いくらもがいてもびくともしない。力では男に勝てない。彼女は青ざめた。
「止めて!」
「いいや、止めない。取り澄ました顔の影で、君は嘘をついたんだ」
「嘘なんて」
「許さない」
のし掛かる慎の力は強く、乱暴だった。
嘘だ、この人がこんなことをするはずがない。
少女の頃、身体を重ねた時の記憶が壊れてしまう。
大切な、最後の拠り所、柔らかな、温かい、幸せだった頃の思い出が、『夫』と過ごした最初で最後の夜にすりかわる。
悪夢だったあの時、嫌だと言っても聞き入れてくれなかった。後生だから、と半ば哀願され、強制的に開かれた足を割って、彼は入ってきたのだ、まだ固い彼女の中へ。
――死ぬかと思った。
いやだと、止めてくれと、何度も叫んだのに聞いちゃいなかった。死人への配慮が吹き飛ぶ。力づくで思いのままにしたあんな奴。大嫌いだ。『夫』に愛なんて感じるものか!
彼と同じことを、あなたもするというの!
はだけた襟元から胸が半分以上露出し、ストッキングが大きく裂けて音を立てる。
「いやー!!」
やっとの思いで出した声は、しわがれた、老婆のような声で、彼女は彼の背を力なく叩き、そして脱力した。
「男は――いつも奪うだけだわ。どうして無理矢理開こうとするの、どうしてなの!」
あー、と茉莉花は嘆いた。
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