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かといって、ここまでちゃんと歩いてこれたしちょっと疲れただけだと思っていた。
身体にいまいち力が入らないような感覚はあるが、それも朝食を食べてこなかったせいだろう。
「ちょっとごめんね」
不意に、颯介君の手がこちらに伸びてくる。
その手の指先が一度、こめかみ辺りに触れてからたどたどしく額を探す。
前髪の下に潜り込むようにして、その手が私の額を覆った。
「春妃ちゃん」
「うん?」
「熱ある」
私の額に触れたままそう言うと、もう片手も伸びて来て頬の熱を確かめる。
「うそぉ。言うほどしんどくないよ?」
「ってことはちょっとはしんどいんだ?」
「あー……うん、ちょっとだけ。でもたいしたことは……」
「結構高いと思うよ。額に手で触っただけですぐわかるくらいなんだから」
少し怖い顔をして、颯介くんが溜息をつき「なんか、声がおかしいと思ったんだ」と呟いた。
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