2049人が本棚に入れています
本棚に追加
私の声だけで、不調を感じ取ってくれたのならそれってすごいな、と思いつつ……やはり、熱の影響なのだろうか。
颯介くんに額を触られるままに、ぼんやりとしていた。
「……ごめん」
颯介くんが唐突に謝って、彼の方こそ辛そうに眉尻を下げる。
「なんで?」
「もっと早く気づいてあげれたら良かったのに、無理させてごめん。今日はもう御終いにして、彼に迎えに来てもらったほうがいいよ」
「大丈夫、ひとりで帰れるけど……音訳は今日は御終いにしていい?」
無理をして、颯介くんの仕事にミスが出てもいけない。
額から彼の手が離れて、自分で額や頬を触ってみたが、自分ではよくわからない。
だが、確かに身体のだるさは覚えがある。以前、インフルエンザで高熱を出した時の感じに似ている気がした。
「一人でなんて帰せないから、電話して。ほんとなら、できるなら僕が送って帰りたいけど……」
眉根を寄せ唇を噛む。
彼のそんな表情を見ながら、私は首を傾げて様子を伺うのだけれど。
「早く、電話。彼ならすぐ迎えに来るでしょ、きっと」
だから早く、と促され、仕方なくバッグから携帯を取り出した。
最初のコメントを投稿しよう!