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携帯画面を指でタップして、亨の番号を見つけて発信する。
耳にあてて呼び出し音を聞いていると、ほどなく繋がった。
「もしもし、亨?」
私が話しはじめたのを確認して、颯介くんが席を立ち、立てかけてあった白杖を手にどこかへ歩いて行った。
『……ん』
まだ少し寝ぼけてるような声が携帯電話の向こう側から聞こえ、私は颯介くんの背中から机の上に視線を戻す。
「ごめん、寝てた?」
『んー……もう終わった?』
「んなわけない、まだ午前中だよ。でもなんか熱っぽくて」
そう言うと、返事はないがごそごそと起きだしたような、布の擦れた音がした。
「帰って寝ようかと思ったんだけど、一人じゃ危ないからって」
『迎えに行く』
語尾に被さるように、返事が聞こえた。
「ごめん、ありがと」
『いつもの図書館でいいんだよな。外に出ないで中にいろよ寒いから』
そう言うと、ぷつっと通話は切れてしまった。
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