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ふんわりと首元と肩があったかい。
「……、……」
誰かの話し声がして、かしゃかしゃとどこかで聞いた音が遠ざかる。よく、知っている音だ。
同時に、肩に手が置かれて軽く揺すられた。
「……春妃」
それは亨の声で、驚いた私はぱっちりと目を開いた。
目の前のぼやけた輪郭が何度か瞬きを繰り返すとはっきりとして、それは気遣わしげに覗き込む、亨の顔だった。
「あれ? 亨?」
ホンの数秒、目を閉じていただけのつもりだったのにいつの間にか眠っていたみたいだ。
私は図書館の机に突っ伏した状態のまま、肩にいつの間にかこの図書館で貸出されているひざ掛けがかけられていた。
亨の手が私の首元に伸びてきて、リンパ腺の辺りに触れる。
「うわ、まじで熱いな。お前、眠ったまま起きないから医務室に運ぶか救急車呼ぶかでちょっとした騒ぎになってたぞ」
「え、そうなの?」
言われてみれば、亨がきたことでとりあえず様子見になったのだろうが図書館の受付のお姉さんや他の来館者がすこし遠巻きにこちらを伺っていた。
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