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額を押されて若干後方へ仰け反った享は、カチンときたのかそれでも無理矢理抱き上げようとする。
私は私で、それを阻止しようと暴れるから、椅子がガタガタと音を立てた。
「お前うるさい。静かにしろって」
「そっちこそ離してよ、嫌だってば」
膝の上にひざ掛けが乗ったままで、片手には颯介君のハンカチ。
好き勝手にじたばたしたら、ひざ掛けが床に落ちそうになり仕方なく足だけは大人しくする。
腕だけで暴れたら、結果、濡れたハンカチが亨の顔面に当たってしまった。
「あ、ごめん」
ますます不機嫌な、顔。
彼が仕方ないとでも言いたげに深々と溜息を付き、身体を離して立ち上がった。
「じゃあ立ってみろよ」
「立てるもん、ほら」
と、立ち上がって見せたけれど。
「あれ」
「ほら見ろ。熱高いって言ってんだろうが」
立てたことは、立てたけど。
足に力が入らなくて、なんだかふわふわした。
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