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「ねぇ」
「えっ? はいっ」
無視されることはなくなったが、業務に無関係な話もしない。
そんな状態だったから、急に話しかけられて驚いた。
無意識に背筋が伸びて、声のトーンが上がる。
「間宮さんと、上手くいってるの?」
私の方には目もくれず、ロッカーの扉の内側についた小さな鏡で化粧のチェックをしながら、の言葉で横顔は無表情だった。
だから、その質問の意図が読めなかったけれど。
「あ……はい。そう、ですね」
「ほんとに?」
正直に答えたのに、確かめるように聞き返す。同時にちらりと横目を走らせ、一瞬だけ目があった。
「は……い。なんでですか?」
戸惑いながら、今度は私が聞き返すと、先輩は「別に」とだけ言ってぱたんとロッカーを閉じる。
「お先に」
さっさと、更衣室を出ていってしまう後姿を、黙って見送るしかなく……。
「……なんなのよう」
人を「もやっ」とだけさせていくなんて、やめてほしい。
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