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私は忘れていたはずのもやもやが思い出されて、美佳に向かって身体を乗り出した。
「え、何かあるの?」
問いかけると、美佳はふっと顔を上げ、なんでもないと首を振った。
「なんもないよ。ただ、こないだはなんか不安そうにしてたから」
「あ……そっか。心配かけてごめん。でも大丈夫。なんか……やきもきしてるの私だけじゃないのかなって気付いたから」
「あはは。そりゃそうでしょ。私から見てても、間宮さん春妃にべた惚れだけど?」
「べた惚れ……てまでは、いかないと思うけど」
「嬉しそうな顔しちゃって、現金なやつ」
美佳が、くすくすと笑う。
私は頬をグニグニとつまみながら、食後の紅茶を意味なくスプーンでかき混ぜた。
ヤキモチをやいて不安になるのが、私だけじゃないといい。
貴方も同じように不安になったりするんだと、実感すれば安心できた。
そんな気持ちが、あまりに幼いことだと気付くのはもう少し後のこと。
好きなら相手の気持ちを思い遣るべきで。
そんな当然のことが頭に浮かばないほど私はこの恋に夢中で。
臆病になっていた。
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