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お好み焼き屋を出て、後はどこにも寄らずにマンションに連行された。
亨のマンションはいつも片付いていて、ヘタすれば私の部屋より綺麗かもしれない。
私はついつい、小さな雑貨を細々と並べる癖があるから、掃除の後などでついつい適当に置いてしまった時などは、どうしても乱雑な印象になる。
「手伝う」
コーヒーを淹れてくれる亨の後を追って、キッチンに入った。
キッチンは片付いているというよりも余り使われていないんだろう、レンジ台には油汚れも全くない。
「気にしないで座ってれば」
亨はコーヒーメーカーをセットしてカップを並べると、ネクタイの結び目を引っ張って緩めた。
「だって……なんか手持ち無沙汰だし」
といっても、結局ここにいても手持ち無沙汰だ。
食器やコーヒーの場所も知らなかったから。だけど、これで覚えた。
亨の過去を詮索したくはないけれど、少しずつ、亨の近くに自分の居場所を作ればいいのだ。
なんて、私なりに考えてみたのだけれど。
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