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視線を外し、前を向く。
哀れだとは思う。
しかし、それ以上の思いはない。
これが、この男の運命だった。
そうとしか言えなかった。
外は依然として強い雨が降っていた。
部屋の隅に掛かる、防水処理がされた厚手のマントを拝借する。
それを、赤ん坊も覆えるように身に纏う。
考えを巡らせながら、歩き始める。
しばらく目立つことは避けなければならない。
その前に奴に挑むべきか。
自分の力では、いや、自分という存在では奴を殺すことは出来ない。
自分が死ぬこともない。
しかし、絶対ではない。
危険であることに変わりはない。
それでも、奴の目を欺くことはできる。
挑む価値は十分にある。
思考を少しずつ固めながら、彼は闇の中へと消えていった。
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