プロローグ

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手遅れだった。ならば、せめて。 少し荒れた息を整えながら、彼は静かに部屋を見渡す。 彼の立つ位置の反対側の扉、その奥。そこではない。 見上げる。屋根裏。そこでもない。 どこだ。 一刻を争うという程ではないが、あまり時間が無いのも事実。 いずれ奴は嗅ぎつける。今見つかることだけは絶対に避けなければならない。 どこにいる。 儚い光。聖なる力。 微かに感じる。確実に存在する。 彼は目を閉じ、精神を集中させる。 視覚は邪魔だった。聴覚も嗅覚もいらない。 集中する。 雨の音が聞こえなくなる。血の臭いが薄れていく。 光。聖なる力。その源。 彼は目を開けた。感覚が蘇る。 見つけた。 この部屋。惨劇の場。その中心。二つの死体が横たわる所。 だが、そこではない。その下。地下から感じる。 そこに、いる。
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