プロローグ

4/11
前へ
/18ページ
次へ
ふと、彼は気付いた。 未だに広がり続ける、大きな丸い血溜まり。その一部が、見えない壁でせき止められたように、不自然に途切れている。 注意深く観察する。 血は、一枚の床板の淵に沿って途切れていた。いや、そこから下に流れているようだった。 それに触れてみる。微かに動く。つまり、固定されていない。 どうやら嵌めてあるだけのようだ。 近くにあった折れた剣の刃先を手に取り、その隙間に差し込む。梃子のように床板を持ち上げると、簡単に外れた。 ここか。 しかし、現れた隙間は僅かなものだった。 そこに手を入れ、引く。動かない。 どうやら死体が重りになっているようだ。 死体を隅に寄せ、改めて床板に手を掛ける。 ずっしりとした手応えがあるが、今度は持ち上がった。 溜まっていた血が、重力に逆らえず川のように流れていく。 成人男性が楽に通れそうな穴が出現する。梯子も付いていた。 覗き込む。 底が微かに照らされている。 この場からは見えないが、ある程度の広さは確保されているようだった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加