1人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、それでは今までと変わらない。
同じことを繰り返すだけだ。
いや、状況はそれよりも悪いかもしれない。
このために、彼は小さくない代償を払った。払ってしまった。
それでも間に合わなかった。
このまま全てが無駄になるかもしれない。
答えが出ないまま、考える。
赤ん坊と目が合った。
驚いた。
いつ目を覚ましたのだろうか。
いや、違う。
驚いたのは、目の前で目を覚ましたことに気付けない程思考に没頭していた、自分に。
思う以上に、自分は追い詰められているのだろう。
それまでの思考を止める。
泣くことも笑うこともなく、ただ彼の目を見つめる無垢な瞳。
この子はなにも知らない。
彼が誰か。自分が何者なのか。
だが、彼は知っている。
自分の運命を。この子が背負う宿命を。
赤ん坊が小さく笑った。
そのせいではないが、頭に突如湧くものがあった。
それが急速に溢れ出る。
最初のコメントを投稿しよう!