プロローグ

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しかし、それでは今までと変わらない。 同じことを繰り返すだけだ。 いや、状況はそれよりも悪いかもしれない。 このために、彼は小さくない代償を払った。払ってしまった。 それでも間に合わなかった。 このまま全てが無駄になるかもしれない。 答えが出ないまま、考える。 赤ん坊と目が合った。 驚いた。 いつ目を覚ましたのだろうか。 いや、違う。 驚いたのは、目の前で目を覚ましたことに気付けない程思考に没頭していた、自分に。 思う以上に、自分は追い詰められているのだろう。 それまでの思考を止める。 泣くことも笑うこともなく、ただ彼の目を見つめる無垢な瞳。 この子はなにも知らない。 彼が誰か。自分が何者なのか。 だが、彼は知っている。 自分の運命を。この子が背負う宿命を。 赤ん坊が小さく笑った。 そのせいではないが、頭に突如湧くものがあった。 それが急速に溢れ出る。
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