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彼はその手を赤ん坊の背後にまわし、ゆっくりと抱き上げる。
純粋なその子を汚さぬように、纏う布の上から。
華奢なその子を壊さぬように、優しく。
赤ん坊の放っていた光が完全に消える。
まだ据わらない首を支え、彼は静かに立ち上がる。
為すべきことは決まった。
ここに留まる理由もない。
早急に立ち去らねば。
右手で器用に抱きなおし、赤ん坊の顔に左手をかざす。
あやしてもらえると思ったのだろうか。
不意に赤ん坊が彼の左手の小指を掴んだ。
「くっ……!」
焼けるような痛み。思わず声が漏れる。
小さな拳の指と指の隙間から、微かに煙が登る。
引き剥がす。
掴まれた小指には、小さな手形がくっきりと残っていた。
赤ん坊と言えど、受け継いだ力は強大だということか。
しかし、それを制御する術をまだ持っていない。
気を取り直し、再び手をかざす。
強靭な力を宿してはいるが、操る方法も抗う術も持たない。
赤ん坊は間も無く寝息を立て始めた。
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