春は何かと忙しい

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電話を切って、冷蔵庫の中を思い出しながら買い物するものを考える。 近頃のスーパーは遅くまで開いているから、こういう時に助かる。 なんとなく……亨は一緒に住むことを望んでいるように感じる。 私はどうか、というと。 それを考えるたびに、つい両親のことが思い浮かんでしまう。 もう大人なんだし、自分のことは自分で決めると言えば格好は良い。 けれど、自分の娘が結婚前に男と住みだしたりしたら、当然心配するだろうしそれをまるきり無視するのも違うと思う。 『触れられたくない病』のことも、ある。 「パスタでいっか」 最近簡単なカルボナーラの作り方をテレビで見てから、少し凝っている。 後はサラダと……スープはインスタントでも良いか。 こんなふうに亨のために食事を考えるのも、悪くはないと思うのだけど。 つらつらと、あちこちに思考を飛ばしながら、私は駅までの道を急いだ。
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