領収証

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その日の夜、引越しを無事に終えた私はゴミの整理に苦戦していました。 大学進学を機に上京、地方からの初めての引越しということもあり、地域で異なるゴミの出し方に少々戸惑っていたのです。 簡単なゴミの分別から始めようと思った時、不要になった布団が目に入りました。 実家から持ってきたのですが、心機一転するために引越し先で新しい布団を購入したため必要がなくなってしまったのです。 処分の方法を調べてみると、ゴミ処理券なるものが必要だとわかりました。 コンビニでも買えるそうですが引越しの疲れもあり、たかだか数分歩いたところにあるコンビニに行くのでさえ億劫だった私は、ゴミ出しのついでに家の近くのマンションのゴミ置場までその布団を運び、そしてそこに放置しました。 うしろめたい気持ちはありながら、これだけ人が住んでいる場所なら誰の物かバレないだろうという非常に安易な考えでの行動でした。 夜だし、誰にも見られていないし、バレないだろう…と。 次の日、昼から出かける用事があった私は、通り道だったあのマンションのゴミ置場を確認しました。すると、他のゴミは綺麗に回収され、あの布団だけが取り残された状態だったのです。その時にはもう放置しておけばいつか無くなるだろうという気持ちの方が大かったため、見て見ぬふりをしその場を後にしました。 用事を終えて帰ってきたときも布団はそのまま置いてありました。 翌日も、その次の日も、また次の日も、布団はゴミ置場に置かれたまま。 雨風にさらされて、今更回収する気になんてとても考えられませんでした。 誰か何とかして、業者さん早く持っていって…。 あまりに他人任せで身勝手な考えでした。 ずっとこのままだったらどうしよう、と不安な気持ちを抱き始めたのはその頃からです。
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