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「わかっていましたよ。近衛(このえ)四家の秘伝はどちらもとんでもない技だ。どれほど優秀だろうと一個人で一族全員の2000年を超える鍛錬と工夫(くふう)の蓄積にかなうはずがない。ぼくは噛(か)ませ犬ということになる。それは最初にトーナメント表を見たときから気づいていました。準決勝でカザンと当てられるんですから」  逆島継雄(つぐお)が会釈(えしゃく)していう。 「すまない。だが、ここにきて事態が変わってきた。東園寺家では崋山と彩子のふたりのうち、彩子を正操縦者候補からおろして欲しいといい始めたのだ。無理もないな。彩子ちゃんも女性だから」  タツオもはっと思い当たった。もし、正操縦者がサイコに決定すれば、彼女が須佐乃男(すさのお)を降りたときには、もう妊娠や出産は不可能になっているのではないか。短時間の操縦で肉体年齢は50代である。女性の場合、爆発的な加齢は深刻な事態を生みそうだ。子宮や卵巣は一日で新たな子を宿す力を失うのだろう。
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