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 一瞬、少佐の声が怒りで震えた。ジョージが怪訝(けげん)そうな顔をした。なにかに気づいたようだ。タツオもほぼ同時に直感した。 「じゃあ、今回のクラス内トーナメントは……」  継雄は冷静さをとり戻している。 「ああ、我々作戦部が計画した。むこうサイドは渋っていたが、カザンが浦上(うらかみ)幸彦(ゆきひこ)くんの復讐に個人的に非常に熱心でね。五王や東園寺の上層部の反対を押し切って、開催に賛成してくれたのだ」  ジョージが皮肉にいった。 「少佐の計画どおりですね」  ちらりと混血児をにらんで継雄がいう。 「我々作戦部の総意どおりだ」  恐ろしいことに気づいた。腹が立つというより悲しみが突きあげてくる。 「じゃあ、テルが片腕を失ったのも計画どおりだったのか、兄さん?」  継雄は無言で、控え室のなにもない殺風景な壁をにらんでいる。表情はまったく変わらなかった。
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