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「谷(たに)照貞(てるさだ)くんはすべてを知ったうえで、自ら1回戦でカザンと当たることを了解してくれた。おまえの怒りもわからない訳ではないが、暁島会(ぎょうとうかい)をもっと信頼するんだな」  ジョージも負けずに冷静だった。 「ですが、ぼくとタツオもカザンを釣るための餌(えさ)であることに変わりはない。ぼくたちはそんな事情はなにも聞いていませんよ」  逆島継雄少佐が純白の式典用制服で、いきなり頭を下げた。直立不動に戻るという。 「そうだ。最後の試合を控え、その点について謝罪するために、わたしはここにきた。とくに菱川くん、きみへだ」  タツオは兄の真意がわからなかった。準決勝を控えて、なにをいうことがあるのだろう。  作戦部少佐は淡々といった。 「きみは時間操作術を持っていない。勝負の行方は絶望的だ。タツオにはすくなくとも『止水』がある。過去の数百年間で東園寺対逆島の直接対決は17回を数える」
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