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「最近は・・・マネージャだから・・・恋人じゃ・・・ないの?」
「違うよアキ。ちゃんと思い出して。僕たちはいつでも恋人同士だよ。一ヶ月前、キミがほっといてくれって言ったんだよ」
「あれはっピアノのことで」
「ピアノのことは放っておいてもセックスはしたいの? なにか大きな秘めごとをされた相手と平気でできると思うかい? 」
「っ・・・」
「僕がどれだけ淋しかったかキミにわかるかい? 」
「俺だって・・・ベッドでひとり・・・淋しかった」
「やれやれ。僕はベッド以外のことも言ってるんだけど。アキ、してないの? 」
「だって正司さんじゃないと・・・俺」
「ウソだろう? 」
「指じゃ、ダメで・・・」
アキの瞳がみるみるうちに潤んでいく。
「後ろでないとイけないのかい」
「正司さんとなら前だけでもイけるんだけど」
正司は思わず身をよじった。
「あ。正司さん、大きくなってる」
「そんな話されたら誰だってなるよ」
アキが席を立ち正司の手を取る。
「一緒にシャワー行こう? 正司さん」
やわらかな紅茶味のキスが口の中に広がる。
しばらくして陽気な音楽とシャワー音。そして途切れ途切れに甘い声音が聞こえてきた。
いったいどれくらい搾り取られただろう。
アキもそうとうな回数果てたはずだ。
バスルームから出てきたふたりはやっとの思いで体を拭きベッドへと横になる。心地好い脱力感。
「アキ」
「何? 」
「結婚式しようか」
「・・・え? 」
「僕たちの間柄が曖昧でわからなくなるなら」
「結婚式をふたりでしよう。海外で」
「ふたりでタキシード? 」
「そう」
「・・・いいや」
「どうして」
「タキシードなら毎晩着てるし。正司さんが抱いてくれてるうちは見失わない」
「抱いてくれてるうちはって・・・」
「生涯現役でしょ? 正司さん」
天使のようなアキの笑顔。
「ガンバリマス・・・」
正司の額に汗がつつーと流れる。
「正司さん。俺ウザイって言ったの撤回する。だから前みたいに束縛して」
「いいのかい? 」
「うん。俺やっぱりあの甘い束縛がないとダメなんだ、不安で」
「甘いかどうかは。わからないけどね・・・」
「甘いよ。俺にとっては」
手も足も身動き取れないくらい束縛されたって構わない。それは熱い抱擁と同じなのだから。アキには正司より優先するべきものなどないのだから。
ピアノは別次元、それは正司もわかっている。
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