第1章

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「あと。見送りと、出迎えは行けない。ごめんよ、アキ。平常心でいられる自信がないんだ」 「・・・わかった」 「ここで、待ってるから」 アキが首を縦に振る。 「ねぇ・・・正司さん。これってピアスのせいかな」 「え? 」 「ピアスで運命変えちゃったのかな俺」 「・・・ピアスがなくても。僕はアキに溺れ、愛の奴隷になっていたよ」 「俺も。そんな気がする」 「・・・・・・」 みつめあって、吸い寄せられるようにくちびるを合わせた。 好きだ。好きだ。好きだ―― その強さがわかるからこそ。いまは一緒にいてはいけない。 そうしてもろもろの準備が整ったアキは、アメリカへと旅立って行った。 そして久しぶりに、ピアニスト不在の店が開く。 やはり初めの頃はCD効果で冷やかしの客も来たが、なにしろピアニスト不在なのだから来ても意味がない、そんなウワサがざぁっと流れ。 あのCD騒動は思ったよりも早くけりがついた。 アキのいない日常―― アンティークのグランドピアノを撫でながら、店じまいした店内で正司はアキの帰りを待つ。ひとり、胸を焦がしながら。 おわり
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