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「そんな・・・耳ばっか・・・やっ・・・」
「そう? 」
耳たぶをあま噛みしながら正司が優しく問う。
しばらく耳を愛撫した後、開放し、みつめあう。行為の最中にじっとみつめあうなんて恥ずかしくて、いつまたっても慣れない。
正司はそれをわかっていてやっているのだ。
「な・・に? 正司さん」
「好きだよ。アキ」
「・・・うん。俺も」
「僕はキミにどんな傷もつけたくない」
「・・・ピアスのこと? 」
「ただの。僕の気持ち」
「そんなっ・・・あっ・・・ああぁ・・・ああ」
結局その後はいつもより念入りに愛されて意識も絶え絶え、着ていたシャツも最後はボタンふたつしか残っていなかった――
「ピアスして欲しくないって言えばいいのに」
そしたら諦めもつくのに。
「アキの自由だよ何て言うから」
迷ってしまう。
かといって。病院に行くほど大げさな気分でもなくて。
ピアッサーっでぱちんと開けてしまいたい気分だった。
「左耳だけでいいんだけどな」
正司が洗車に出ている珍しいアキひとりの時間。
いまなら――
ピアッサーは用意してあった。正司に開けてもらうつもりで買っておいたのだ。
「俺が開けて、病院でやってもらったことにすれば・・・」
アキは戸棚に隠しておいた紙袋へと手を伸ばす。
大きな鏡の前へと移動し、一通り説明文を読み、消毒液とティッシュを用意した。
マジックペンで開けたい穴の位置に印をつけ、耳たぶを消毒する。アキが買ってきたピアッサーはホチキス型で、ホチキスの針の部分にピアスが装填されている。
ガチャン。とやれば耳を貫通してピアスが固定される仕組みだ。
「この辺・・・かな」
アキはピアッサーで耳を挟んだ。
印の位置をなんとなく合わせ。覚悟を決める。
「んっ」
ガチャ。と半端な音でピアッサーが止まる。
「あれ? 」
途中で止まってしまったのだ。
アキはやり直そうとするが、ピアッサーは一度閉まると二度と開かない。そして半分以上閉まっているために耳から抜くことも出来ない。なにしろピアスが刺さっているのだから。
「え? なに? 痛い、どうしよ」
アキがパニックに陥ってる頃。正司が洗車から帰ってきた。
「どうしたんだい? アキ。寝室なんかで・・・アキ?」
「正司さん。助けて」
「一体何を。・・・自分でやってはいけないと」
「ごめんなさい」
「で。どうなってるの。これは」
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