第1章

4/21
前へ
/21ページ
次へ
「ホチキス式なんだけど、閉まったらもう開かないみたいで俺途中で止めちゃって、抜けなくて」 「・・・このまま突き刺すしか手がないみたいだね」 「正司さんお願いしていい? 」 「なんて残酷な子なんだろう君は」 「おれ。やったらすぐ抜くから。そしたら怪我で直るでしょう? 」 「・・・その話はとりあえず後で。いいかい。いくよ」 「うん」 ガチャン―― ピアッサーが外れ金色の丸いピアスがアキの耳たぶに光っていた。 正司がほうっと安堵の息をついていると、アキがそのピアスを外そうとする。 「ちょっと待ってアキ」 「でも俺約束破ったし」 つけたばかりで痛いだろうに。それでも構わずアキは慣れないピアスを外そうとする。 「ちょっとまって。落ち着いて」 アキの両手を取り口元へ導けば指先に薄っすらと血が滲んでいた。 「アキが僕との約束を破ったのは事実だ」 こくり。とアキが頷く。 「でも結果的にこうなってしまったのも事実だ」 また同じように頷いた。 「だから。僕から提案させてくれないか」 「提案? 」 「そう」 「いつか僕がキミにピアスをプレゼントする日がくるまで、絶対にそのピアスを抜かないで欲しい」 「正司さん」 「ピアス。したかったんじゃないのかい? それともそこまで束縛されるのは嫌かな」 「うんん。俺。正司さんに束縛されるの・・・好きかも」 「そうなのかい? 」 「なんか嬉しくなるっていうかドキドキするっていうか」 「アキはそうやって無意識に僕を口説くよね」 「え? 」 かぁっと顔が赤くなって瞳が潤んだ。ほらそうやって。と正司が唇を寄せると。 「痛いっ」 「アキ? 」 「耳がっ。痛い。消毒して冷やさなきゃ」 血の巡りが良くなって痛みが出たのだろう。正司もやれやれといった表情だ。 「それにしても・・・」 冷たいタオルでアキの耳たぶを冷やしながら正司が呟く。 「僕が君の体に傷をつける日が来るなんてねぇ」 「傷じゃないよ。これは、消えないキスマーク」 「上手いこと言って」 「愛のために抜けないピアス、なんてちょっとカッコイイね」 「じゃあ一生プレゼントはナシかな? 」 「・・・それでもいいよ俺」 「うそだよ」 「正司さんにあんなことさせちゃったんだもん。ホントにそれでもいいよ。俺」 「おばかさん。気にしすぎだよアキ」
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

84人が本棚に入れています
本棚に追加