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「ホチキス式なんだけど、閉まったらもう開かないみたいで俺途中で止めちゃって、抜けなくて」
「・・・このまま突き刺すしか手がないみたいだね」
「正司さんお願いしていい? 」
「なんて残酷な子なんだろう君は」
「おれ。やったらすぐ抜くから。そしたら怪我で直るでしょう? 」
「・・・その話はとりあえず後で。いいかい。いくよ」
「うん」
ガチャン――
ピアッサーが外れ金色の丸いピアスがアキの耳たぶに光っていた。
正司がほうっと安堵の息をついていると、アキがそのピアスを外そうとする。
「ちょっと待ってアキ」
「でも俺約束破ったし」
つけたばかりで痛いだろうに。それでも構わずアキは慣れないピアスを外そうとする。
「ちょっとまって。落ち着いて」
アキの両手を取り口元へ導けば指先に薄っすらと血が滲んでいた。
「アキが僕との約束を破ったのは事実だ」
こくり。とアキが頷く。
「でも結果的にこうなってしまったのも事実だ」
また同じように頷いた。
「だから。僕から提案させてくれないか」
「提案? 」
「そう」
「いつか僕がキミにピアスをプレゼントする日がくるまで、絶対にそのピアスを抜かないで欲しい」
「正司さん」
「ピアス。したかったんじゃないのかい? それともそこまで束縛されるのは嫌かな」
「うんん。俺。正司さんに束縛されるの・・・好きかも」
「そうなのかい? 」
「なんか嬉しくなるっていうかドキドキするっていうか」
「アキはそうやって無意識に僕を口説くよね」
「え? 」
かぁっと顔が赤くなって瞳が潤んだ。ほらそうやって。と正司が唇を寄せると。
「痛いっ」
「アキ? 」
「耳がっ。痛い。消毒して冷やさなきゃ」
血の巡りが良くなって痛みが出たのだろう。正司もやれやれといった表情だ。
「それにしても・・・」
冷たいタオルでアキの耳たぶを冷やしながら正司が呟く。
「僕が君の体に傷をつける日が来るなんてねぇ」
「傷じゃないよ。これは、消えないキスマーク」
「上手いこと言って」
「愛のために抜けないピアス、なんてちょっとカッコイイね」
「じゃあ一生プレゼントはナシかな? 」
「・・・それでもいいよ俺」
「うそだよ」
「正司さんにあんなことさせちゃったんだもん。ホントにそれでもいいよ。俺」
「おばかさん。気にしすぎだよアキ」
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