第1章

5/21
前へ
/21ページ
次へ
アンティークの大きな木枠の鏡に座った二人の男性が映る。耳を冷やされている方が腕を伸ばしもう一方の頬に手を添えた。 「さすがにもう一生触ってくれないって言ったら嫌だけど」 「それは僕も嫌だ」 もういいよ。とアキがタオルを取った。 「口きいてくれないとかもやだけど」 「そうだね」 「一緒に寝てくれないとか」 「ふふっ。だんだん小さくなったきたね」 「だからっ。俺は正司さんが欲しいのっ。プレゼントはなくても平気だから」 「・・・・・アキ」 「・・・僕もねアキ。キミが欲しくて欲しくて堪らないんだ。いつもそう思ってる。体だけじゃないよ。身も心もみんな。だからつい束縛してしまうんだけれど、君はそれを嬉しいって言ってくれた」 「うん。正司さんの気持ち。わかるから」 「でね、さっきまでは傷と考えてたピアスホールなんだけど。アキの処女をもらったことにしようかと思って」 「ええぇっ」 と心底おどろくアキに対し。 「穴。だし」 しらっと答える正司の美しい顔。 「正司さん、切り替え早っ」 「そっちの方にピアスつけるヒトもいるらしいからねぇアキ? 」 「知らないよっ。正司さんのエッチ。スケベ」 「でも。アキは 『初めて』 にいい思い出がないだろう? 少しでも僕で上書きが出来ればいいんだけど」 「あ・・・」 カラダで生活費をかせいでいたあの頃。お金のことで精一杯で初めても何も感じられなかった。 「それはいいんだ。上書きは、毎日してもらってるから」 「アキ・・・」 「ごめんね、正司さん。俺ピアスしちゃったから今日、入浴と運動だめなんだ。だから、今日は俺が正司さんにしてあげるね」 「え」 ニコッと笑うアキに手を引かれてベッドへと向かう。 手早くスラックスと靴下を脱がされてベッドに座らされた。 下着の上から擽るようにアキの指が這う。ピアノを弾くあの神聖な指で正司を愛撫している。 「んっ」 「感じる? 」 「あぁ・・・いいよ」 頭を下げよとするアキの顎を指先ですくい、唇へと誘った。 「んっ・・・んぅう・・ん」 巧みな正司のくちづけに。アキの腰も揺れてくる。 「ダメ。・・・正司さん・・・ダメ」 「ごめんよアキ。キミだけに奉仕させるなんて、僕には我慢できないんだ」 手早くアキの服を脱がし、自分も残りの服を脱いだ。 窓柄の光が傾き始めている。正司は間接照明をつけ、部屋のムードを変えた。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

84人が本棚に入れています
本棚に追加