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間髪入れずに、結局唇にキスをされて、茹だったタコのように一瞬で真っ赤になる私。
……もう。
音を立てて唇を離すと、ふふんと満足そうに笑うさつきちゃん。
「さつきさんっ!」
その時。
聞きなれない声がさつきちゃんの名前を呼ぶ。
声が聞こえた自分の後方を振り返るさつきちゃんの頭越しに、私もその姿を見ようと目を凝らす。
そこには……
「…誰?」
さつきちゃんが相手に聞こえないように、小さく呟くのが聞こえた。
5メートルほど先の、購買の出口で嬉々としてこちらに手を振るのは、スラッとした長身の男子。
何等身か分からない、その細身な体の頂点に申し訳程度に置かれた頭は、目を引く綺麗なアッシュに染められていた。
あんな目立つ人、うちの大学にいたっけ……?
っていうか、今の見られたんじゃ……
私がそんなことで気が気じゃなくなっている間に、その人はものすごい勢いでこちらへ走りよってきた。
「さつきさんですよね!!」
「…え、あ、そうだけど…、えっと」
グイグイ迫るその勢いに、さすがのさつきちゃんも若干引き気味だ。
「自分ですよっ!あの、昔上級生に絡まれてるところを助けてもらった…!」
「……たす、…けた?僕が?」
「はいっ!それはもう、カッコ良く!颯爽と!」
目をキラキラと輝かせ、さつきちゃんに必死に語りかけるその姿は、まるで……
犬のよう。
それも、かなり人懐っこい、大型犬。
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