39人が本棚に入れています
本棚に追加
桜の花びらが、強めの風に舞う。
同じ風に、少し伸びた髪の毛を空へ向かって飛ばされながら、私は久しぶりの通学路を眺める。
ーー春。
誰もが心ときめかせる季節。
周りをゆく人達も、お互い久しぶりの再会を喜びながら、どこか浮き足立っている。
その例に漏れずに、私も空と桜のコントラストがきれいだな、なんて柄にも無く上を見上げていた。
ふと視線を通学路に戻すと、いろんな人の笑顔が見える。
あ…、あの子、新入生なのかな。
初々しい黒髪の女の子に目が止まる。
昨日の入学式で仲良くなったのだろう
見知った顔を見つけて、恐る恐る話しかけている。
あっちは、カップルかな?
彼女が、前を歩く彼氏に駆け寄り、ぽんっと背中を叩く。
振り返った彼の顔が、一気に笑顔になる。
会ったの、久しぶりだったのかな。
それとも、ついこの前も会っていたのかな。
二人の様子を見ていても、分からない。
だって、好きな人に会えたら、いつだって嬉しいもんね。
「ひなっ!!」
不意に。
よく通るその声は、風に乗ってまっすぐ私の耳に届いた。
振り返った先には、その場にいる誰よりも目立つ、カラフルなチェックのワンピースに、ピンクのライダースを羽織った姿。
太陽に照らされて金色に輝く髪の毛を揺らしながら、私のところまで軽やかに駆けてくる。
最初のコメントを投稿しよう!