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「手術は急いだ方がいいのですが」
医師は言う。
ですが、って何?
痛さで鈍感になった意識の中、彼女は答えを促す。
「子供さんはどうしますか」
「は?」
子供?
あれだけ痛かった下腹が、瞬時におとなしくなった気がした。言われている意味がわからない。
あほうのように口をあんぐり開けたままの彼女に医師は言った。
「妊娠していますよ。専門ではありませんので確実なことは言えませんが、九割方、間違いなく」
気付かなかったんですか? と問われた。
「だって、生理が少し遅れているだけで、前回は普通に来ていて……」
彼と別れて、さほど時間が経っていないし、と内心で思う。
「ああ、それなら二ヶ月に入っていますね、前回の生理日から数えで月数を数えるんですよ、初めてならわからなくても仕方ありませんが、どうしますか」
どうするもこうするも。
消えたと思った痛みが倍になってやってきた。
我慢なんて出来そうにない! 泣けてきそうだ!
「先生、助けてください」
茉莉花は哀願する。
「子供を――お願い」
心の中で叫んだ。
慎さん、助けて! と。
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