第1章

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日中に吸収した熱を体内に内包したまま、眠れない長い夜を迎える。月が欠けるように、明けない夜はない。全てが移ろって行くのならば、戯れに永遠を夢見ようか。永い夜の楽園は、きっと両手を差し伸べて我々の来訪を待ち望んでいる。引き換えには、決して大人にならない望みを。……先生のマンションまで。手製弁当のミートボールを食べながら答えると、初等科から高等科までを同じクラスで過ごした友人が、含んでいた苺ミルク牛乳を危うく吹き出しそうになった。発端は授業中、友人への投げ文だ。教師の目を盗み、端末ではなく、綺麗に折り畳んだ手紙を机に投げ込んだ。そもそもは友人が、予鈴の鐘が鳴り終わってからしばらく、派手に息を切らして教室へ飛び込んできたからである。ホームルームでは、服装検査が行われていた。普段結ばないタイをリボンにした彼女たちが一斉に振り返る。遅刻、な。若い担任教師の言葉に、友人は頭を下げてから席に辿り着く。一時限目の授業で睡魔と闘う最中に送った文の返事が、すぐにノートの切れ端で返送されてくる。幼馴染みの彼とはどうなったの? が、こちらの最初の質問。愚問! あんたこそ担任教師とはどこまでいったの? と書かれていたので、冒頭の返答になる。相変わらず図々しい女だな。さすが高校教師を彼氏にしているだけはあるね。誉め言葉だと思っておこう。いいけど。何で遅刻したの? 待ち伏せ。誰を? 男を。どこで? 駅で。もういい加減良いから、ちゃんと説明してよ。じゃあ、放課後つきあって。無邪気というには語弊のある笑顔で、何か目論んでいるらしい。そんな騒ぎに巻き込まれるのは、実は意外とやぶさかではない。
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