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「…オイ、賢二、出張ってどういうことだよ、いきなりすぎだろ、聞いてないぞ。」
敬語も一人称も関係なく、俺は賢二に掴みかかった。
賢二とは大学からの付き合いで、悪友であり、同期である。
「まーまー、たばこでも吸えよ。」
賢二はそう言って、俺にたばこの箱を差し出してきた。
「…禁煙してるんだ。」
「正峰、1本くらい大丈夫だ。それに、この部屋にいて吸わないのは厳しいんじゃないのか?」
「…」
図星だ。
くそぅ。
「…ほら、前正峰がリフォームやった温泉旅館あるだろ?」
たばこに火を点け、賢二は話し出しだした。
「あぁ、ロビーを改装した、あそこか?」
「そう。で、そこの奥様が、お前の仕事ぶりを気に入ってくださって、今度隣の離れである自宅のリフォームをして欲しいそうだ。」
「…そういうことか。で、下見してこい、と。」
「そーゆーこと。大体、渡した資料に書いたでしょ。わざわざ奥様が電話越しで仰られたことまとめてやったんだからな。」
「それはありがたいけどさ…」
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