第1章

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 2万3千400円、本日2時間での稼ぎを数えながら煙草に火を点ける。  左側にある運転席に腰を掛けるのは何年振りだろうかと、窓を換気する為に開けながら思う。  パッと見ればホストが着るような形の服に、白い手袋。警察官が被るような帽子を身に纏い、窓から腕を出して、煙草の煙を外に出していた。  そんな時、コンコンと助手席側の窓がノックされた。  ボタンを押し窓を下げていくと全身黒で統一している、『同業者』がそこに居る。 「乗りな」  同じくボタンを押して後部座席のドアを開けると、同業者は乗る。  窓を上げ、ドアを閉め「今日はどこまで?」と、ソフトテノールで問いかける。  同業者は暫し考えて「おめぇの家」と短く言った。 「えー。もっと楽しい所行かない?」 「仕事中だろ」 「こっちの仕事は自由なの」  どこがだ。小さく放たれた言葉に肩を竦め苦笑いを零し、車を発進させる。  黒いその車は誰が見ても分かるよう、電光掲示板で『貨車』と表示され、誰も乗ってこないだろう。   「それで? そっちはどうなのよ? かなり稼いでるみたいじゃない」  煙草を車についている灰皿で消しながら後ろの同業者に問いかけながら、笑みを浮かべてバックミラー越しに見つめる。   「おめぇも大分稼いでるだろ」 「べっつにぃ~。次元さんよりかは稼いでいましぇーんけど」  クククッ、嫌味とも取れる笑みを浮かべタクシーの運転手――ルパン三世は白い手袋越しに2万3千を掴み、ヒラヒラとさせた。  その姿に後頭部座席に腰を下ろしていた相棒の次元大介は肩を竦め、「ルパン、おめぇ……手ぇ抜いたな」と帽子を片手で押さえ口角を上げているのを、バックミラーで確認し「うるせぇな……」とルパンは色々と誤魔化して返答した。
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