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爽志は用があると言って昇降口で大輝と別れた同時刻
この学校の制服を着ていない女子生徒が校内を彷徨いていた
と、言うより迷子になっていた
この学校に転校してきたばかりの
寿 光流 -コトブキ ヒカル-
一年生
「どうしよう…
迷子になっちゃった…──」
茶色毛並みのふわふわロングヘアを握りしめながら、今にも泣き出しそうな顔で辺りを見回している
すると、ふと目に飛び込んできたのが
”図書室“
「図書室だぁ…
──ちょっとだけなら…いいよね」
転校初日でしかも迷子なのにも関わらず、のんきに図書室へと入っていく光流
カラカラカラ───
「失礼、しま~す……」
そう言って小さな声ではあるが一応言ってみた
もちろん返事などありはしない
ここの図書室は三階の一番角部屋
日は射し込むが周りにはとくに教室とかはない
奥に進みいろんな棚を見回す
「本の匂い──
やっぱり落ち着く───」
大きく息を吸い込み、そしてゆっくりと吐き出していた
前の高校ではなかった本が沢山置かれていて、光流はドキドキしている
「あっ…これ
前の学校で読んでた途中の──」
そう思って手を掛けようとしたとき、入り口から扉が開く音がした
『ヤバイ……』
咄嗟に隠れようとしたが、迷子なっているのが正しい
ここは大人しく出て、職員室を聞いた方が良いのでは──
そう思った光流は大人しく出て、誰かが入って来たであろう入り口へと向かった
「あのっ…」
勇気を振り絞り、入り口のところに設置してあるカウンターを背に立っている男子生徒に声をかけた
「まだ生徒がここに居たんですか?
もうとっくに予鈴は鳴っていますよ」
後ろ向きで作業をしているため、誰だかわからず取りあえず注意する男子生徒
「いえ、あのそうではなくて……
お聞きしたいことが──」
「聞きたいこと──
ですか?」
そう言いながら振り返ったのは紛れもなく生徒会長の爽志だった
「あなたは他校の生徒ですか
なぜ校内にいるのです」
言い方は普通だが、紛れもなく怒っている
『この人怖い……眉間にしわよってる』
今にも泣き出しそうな光流は歯を食いしばり事情を説明した
「──そうでしたか
本日こちらに転校してきたのですか」
「はい
ですが、職員室を探しているうち迷子になってしまって───」
光流が話をしているのにも関わらず、作業をやめない爽志
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