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「あの~……」
「何ですか?」
「職員室……の行き方を──教えて頂けないでしょうか」
「いいですよ」
爽志がそう言うと光流は笑顔でお礼を言った
しかし待っても作業を止めてくれるわけでも、職員室までの行き方を教えてくれる訳でもなく、ただ時間が過ぎていった
と言ってもものの5分でそれは片付き、爽志はカウンターから出てきた
「では、行きますよ」
そう言って図書室を出ようとする爽志
「え?
あの──」
慌てて爽志の後を追うように急いで図書室をでる
「どこに──」
「職員室ですよ」
当たり前のように言ってきた爽志に、慌てて言い返す光流
「行き方を教えていただければ大丈夫ですから!」
「多分ですが、貴女に説明してもまた迷子になると思いますよ」
平然と失礼なことを言う爽志に、顔を真っ赤にしながら怒る光流
「ちょっと!
それはあまりにも失礼です!!」
「そうでしたか
僕の言葉で傷ついたのでしたら謝ります
ですが、本当のことではありませんか?」
「ッ!」
それは本当のこと
図書室から今職員室に向かっているのであろう道のりはかなり複雑だ
迷路と言っても可笑しくないほど変なつくりの学校だ
「ごめんなさい
それは本当のことです
ですが、それを当たり前のように肯定するのは如何なものかと──」
かなりの落ち込みをみせる光流に小さな溜め息をついて
「そうですね
それは僕が悪いです
さっ、着きましたよ」
顔を上げるとそこは間違いなく職員室の前
タイミングよく職員室の扉が開き、先生が出てきた
「寿!?
心配したぞ
いつまでたっても来ないから学校で迷子になったのかと思った」
「あはは…すみません」
光流が横をみると爽志はもういなかった
『結局誰だったのかな……
名前、聞き忘れちゃった』
これが光流と爽志の初めての出逢いだった
その頃爽志は自分の教室に向かう途中、今までに 見せたことのない笑みを浮かべていた
「(これは面白い娘(こ)が入ってきたな…
少し様子を見るとしようか──)」
「見てぇ、会長が笑ってる~」
「あんな笑顔初めてみたかも~」
「やっぱり笑顔もカッコいい~」
そんな言葉が聞こえてきては普段の顔つきに戻り、やはり女子生徒たちに一言
「もうすぐ本鈴が鳴りますよ
授業の準備をしなさい」
「は~い」
女子生徒たちの返事を聞くと、爽志はまた歩き出し、自分の教室へと歩みを進めた
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