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「で、企画はどんな感じなの?」
温め直した鍋の湯気で曇らないよう、眼鏡を外した部長が言った。
「詳しいイメージよりも先にネーミングを決めたいんです。その方がイメージ固まるかと思って」
「ネーミングか」
腕組みをした部長が、座椅子の背凭れに寄りかかって天井を仰ぐ。
その首筋と、喉元の男っぽさに仕事モードがオフに切り替わりそうで、テーブルの片隅に置いたアイディアノートに視点を移した。
使う人の力になれるアイシャドウ。
ターゲットは大学生、OL、若いママたち。
急遽ここに連れて来られるまで、自宅のテーブルで書き留めた文字を確認してから、目を瞑ってイメージするけど、決定的なワードが出てこない。
ため息混じりに箸を置いて、部長が頼んでくれた梅酒をひと口飲んだ。
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