第1章

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頭一つ分背の高い方に持ってもらって、 同じ傘で歩き始める。 「今夜は月が見えないな」 「折角、 ……だったのに」 同級生の呟いた肝心の言葉が聞こえなくて、 下を向いていた顔を上げる。 同時に赤い傘が視界を遮って、 何か一瞬、 冷えた唇に触れる。 一度離れて、 眼鏡が鼻に当たった。 一時停止していたら、 同級生が囁く。 「悪かった」 謝罪の言葉に我に返って思わず、 雨の中に一人、 駅へと駆け出していた。
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