十月 秋刀魚と幸一の奮闘記

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 十月に入った。そして正直面倒な運動会が近づいている。運動会に向けて、いろいろと練習する生徒もたくさんいる。ちなみに自分は運動会そっちのけで空の面倒を見るのに必死だった。 「こーいち、ちょっと出かけてみたい」  ここ最近になってちょっとした散歩をしてみたいとのことだった。家の中のものに飽きたのかもしれない。  空が出かけたいとのことで早速散歩に。当然空は自分のシャツを掴んで後ろからついてくる。この状態でも出かけられるなんて前と比べては進歩したものだ。歩いていて声をかけられたら、従兄弟の妹の世話を頼まれたといって嘘を言っている。やはり誰も皆不思議そうな目で空を見る。  簡単な散歩を終え、家に戻る。そうすれば手を洗って、うがい。そして料理に入る。 「こーいち、今日の料理は?」 「いつもの魚」  魚。と言っても今日はサバ。もうそろそろ秋刀魚がおいしくなるころだ。きっと空も気にいるだろう。次見かけたときは買うことにした。  料理を作り終えればすぐにご飯。いつも通りご飯を食べた後はシャワー。が、最近は風呂になった。空から言い出したことだ。シャワーじゃなくて、風呂がいいと。これも進歩の一つだ。空が変わり始めていた。今までの空とは変わっていた。ただ、やはり風呂に入るときは自分が濡れてもいい服で付き添う。 「~~~♪」  彼女が自分で作ったリズムで鼻歌を刻む。柔らかな声が浴室内に響く。前はシャワーでも嫌がっていたが、風呂に入っている上機嫌な空を見ていると過去の話がウソに見える。 「ねぇねぇ~こーいちも入ろうよー」 「俺には空の頭と体を洗う仕事がある。だからダメだ」 「むぅ~…わかった…」  頬を膨らませ、浴槽に口をつけぶくぶくと泡を出していた。
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