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真夏の太陽が照りつける中を、三人の少年がひた走る。端から見れば夏休みを満喫する子どもたちのほほえましい光景だ。だが当の少年たちの心中は必死そのものだった。
「なんでこんな時にかぎって大のほうなんだ太陽!」
「いやーあれは大きかった。俺あんな大きいの出したの初めてだぜ! 流さずに自由研究に使いたいくらいだった!」
尻が切れると思ったもんな! とあっけらかんとした笑顔を浮かべる太陽は自分が悪いなどとひとかけらも思っていないのだろう。相変わらずの態度に裕太はもう一度かみつきたくなるのをぐっとこらえ、最後尾を走っているはずの友人に尋ねた。
「秀也、後何分!?」
しかしその問いに答えは返ってこない。不審に思って振り返ると、自分と太陽から数メートル離れた場所で膝に手をついて荒く息をする秀也の姿が見えた。その髪は汗で顔に張り付き、かけているメガネにまで水滴がついている。
「ど、どうして、俺まで、走らなきゃいけないんだ」
いつも無表情といっていいほどクールな秀也だが、こと運動となるとからっきしだ。裕太はその腕をひっつかむと、半ば引きずるようにして再び走り出した。すぐ後ろに太陽が続く。喘息を患っていた数年前なら十メートル走っただけで発作を起こしていたが、今の裕太の身体はいたって快調だ。呼吸が苦しくなることもなく、心置きなく全力疾走することができる。
小学生にしては大人びた秀也の腕時計は八時二五分を過ぎたところ。今ごろ教室には予鈴のチャイムが響いていることだろう。街中を全力で走り抜ける自分たちに向けられる視線など気にもとめず、ひたすらに足を動かした。
流れる汗を気にもせず校門をくぐり、三人は転がるように教室へ飛び込む。すでに着席しているクラスメイトたちの目が荒々しく入ってきた三人組へと一斉に向けられた。
「やっときたなお騒がせトリオ」
久しぶりに見る担任に出席簿で順番に頭をはたかれる。
「小西裕太、林太陽、大島秀也。三人ともぎりぎりセーフだ。よし、五年三組は全員出席だな」
お咎めがほとんどなかったことに胸をなでおろしながら、荒い息を整えて席につく。
「間に合ってよかったね」
ふと隣から聞こえた柔らかい声に裕太の心臓がとくんと跳ねる。
「か、加地。おはよう」
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