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「佐々木くん、確かにスピードは大事なのね。でもね、私は佐々木くんには、今は一ヶ月の流れや、我が部署のこと…そして会社全体のことを勉強してもらいたいのね」
佐藤部長は『駐車場へ行くのね』とくるりと向きを変える。
体に似つかわしくない大きめのバッグを持つことに手こずっているようなので、僕は『お持ちします』と佐藤部長の手の中から貰った。
「佐々木くんの良いところは、正確だし丁寧なところなのね。字も暗号のような字ではないし、とても読みやすいのね。時々、人によっては解読不能な字もあるから……まいっちゃうんだもんね」
『ブスブス…』と何か思い出したのか、思い出し笑いをしている。
「他には、今みたいに優しいところもなのね。先日もカメムシが踏まれないよう、こっそりトイレの窓から逃がしてあげてたのね」
「み……見てたんですか?」
「他の人達なら外に出すまで大騒ぎだけど、静かにこっそり誰の目に触れさせることなく……ゴキブリのような静かさと素早さだったね。胸を張っていいのね」
「あ、ありがとう……ございます」
誉めてくれてるんだけど、すごく微妙だ。
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