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「ペンは見つかったのね?」
動揺しながら僕が戻ると、エレベーターの前で、佐藤部長は足をぶらつかせながら椅子に腰掛け待ってくれていた。
「あ…待っていただいてすみませんでした。見つからなくて……ここじゃなかったのかも…」
「嘘が下手なのね」
佐藤部長は苦笑する。
「佐々木くんに憑いているムジナの霊がひどく興奮しているのね。さっきまで紫色の顔で震えていたのに、今は緑色に変わって目玉が飛び出そうなほどなのね」
僕の頭の上を指さし、右へ左へとまるで後を追っているかのように指を動かす。
「ついさっきまでフウセンウナギのように可愛かったのに……ムジナは正直なのね。佐々木くんのムジナは特にムジナらしからぬムジナなのね。だからすぐわかるのね。何か嫌なことでも言われたのね?」
「ム…ムジナらしからぬムジナ……ですか」
視えないが、確か低級霊と呼ばれる部類なんじゃ。
霊に良いも悪いもないかもしれないが、あまり良いのが憑いてないんだな。
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