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首を傾げている僕に、『どんな日もあるのね』とにっこり笑う。
慣れてきたからたぶんにっこり笑っていると思われるだけで、実際は写真に写り込んだ霊のようなゾクリとする顔なんだ。
何人かはどう見えたのか、想像でしかないが……
悩殺されたようで、鼻血を出したり失神したんだけど。
「佐々木よ、やればできるではないか」
「でも……良心が痛んで…」
「これくらいでへこたれてどうする!」
何人かの先輩の腕が僕に振り下ろされた。
「害獣対策のための、やむを得ない苦肉の策。いわば今が食べ頃の果実を守っているのだ。我々も心苦しいことにかわりない」
「ああ、そうだ。愛らしい顔をした獣が人に迷惑をかける……それを駆除せねばならないこともあるだろう?獣害に苦しむ農家さんの気持ちになってみろ」
「は……はあ…」
「我々は駆除と言う名の抹殺を成し遂げるまで、張り詰めた有刺鉄線を緩めるわけにはいかんのだ」
先輩たちは『そうだとも!』とみんなで腕を突き上げ、各々の仕事に戻っていった。
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