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「一人だとホームシックになるのね?」
「はあ……この年で一人になるのが苦手だと言いにくいのですが…もし、佐藤部長さえよろしければ御写真を…」
先輩たちは『グッジョブ♪』とばかりに親指を立てた。
「なら心配いらないのね。私も一緒なのね♪」
「はい?」
僕の時間が止まる。
先輩たちも埴輪のような目になり、耳に指を入れてほじくり始めた。
「私も研修会に参加するのね♪さっき私も申込みしたのね♪私たち二人で行くのね♪楽しみなのね♪」
陽気な佐藤部長の前で、さぁーっと音をたて、先輩たちの顔が青くなった。
僕なんて、失神しそうになった体をなんとか立て直したくらいだ。
「佐々木っ!きさま~ぁっ」
「ぼ…僕……知らなくて……」
「いや、佐々木よりアイツを止めろ!」
部署内が一瞬にしてパニック状態と化した。
先輩たちの数人が、提出に行った先輩を追い駆け出す。
何人かが内線で探す。
「ただいま戻りました」
だが、そんな甲斐虚しく先輩は悠々と帰ってきてしまった。
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