現在 -誘い-

2/13
1031人が本棚に入れています
本棚に追加
/207ページ
金曜日は、比較的仕事が落ち着いていた。 これなら、8時に修二に会うことができるだろう。 自分の担当する仕事にある程度目処がたったので、隣の席の同僚に声をかけた。 「なんか手伝うことある?」 彼女は、嬉しそうにこちらを向いた。 「わー、助かるわ~。じゃあ、色校チェックしてもらえる?」 そう言うと、彼女は、俺に、今彼女が担当している販促物の色校正と原稿を渡してきた。 色校正とは、印刷物の印刷具合を確かめるものだ。 実際に使用する紙に実際に使用するインクで印刷する場合は、本紙校正、コピー紙などの簡易的な紙に印刷する場合は、簡易校正と言う。 彼女から預かったのは、本紙校正だった。 「これ、いい紙使ってるね。」 紙自体にテクスチャーが入っていて、厚い訳ではないのに、コシがある。 「クライアントからの要望なの。探すの大変だったよー。」 そう言って笑った。 やっぱり、俺たちの仕事は、紙と深く関わっている。 その高そうな紙を見て、修二の顔が思い浮かんだ。
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!