序章

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北の大地の深い森。 幼子を抱えた母が息を切らし、 必死で逃げ回っていた。 「ハァ~!!ハァ~!ハァ~!!!」 兵士たちが刀を片手に上げて、 追われていた。 「そこの女!!待ちあがれ~!!」 母が走った先には、大きな木があった。 「・・・!」 母は左右を見回したが、 逃げ道が無い行き止まりに来てしまった。 「どうしましょう・・・!」 兵士たちは息を切らしながら、 母たちに追いついた。 「やっと、追い詰めたぞ!!」 母は必死で自分の着物の袖で、 幼子を隠しながら言う。 「この子・・・この子だけは!!  助けてください!!」 兵士たちは親子にゆっくりと近づく。 「それは、無理な話だなぁ」 兵士たちはワクワクした様子を見せる。 「オレたちに獲物されたのが、  運のつきだなぁ・・・」 母の着物の袖に隠れている幼子は 不安げそうに母の顔を見る。 「・・・・!!」 母は自分は恐怖しているのに、 幼子の背中を優しくさすって勇気付ける。 「大丈夫・・・大丈夫・・・」 兵士たちは刀を振りかざす。 「おりゃ~!!」 母は幼子を庇うために覆いかぶさって、 兵士たちに背中に切りつけた。 「うっ・・・!」 斬りつけられた母はゆっくりと、 倒れて息をひきとる。
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