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煙を棚引かせて、機関車がホームに到着する。
昇降客の群れから過たず、幸宏と幸子はお互いを見つけ出した。
「さっちゃん、こっち!」と言いながら左手を挙げる彼に、きょろきょろと不安そうな表情を浮かべていた幸子の顔は一瞬で安堵を含んだものになる。
幸宏の胸中に拡がるのは、悦び。
もしかしたら……来てくれないかもしれない、気が変わって来訪を取り止めるかもしれない、とホームで待つ間不安だった。
彼女は、来てくれた。
武に贈られたスカートを身につけて。
「回ってみせて。一回」
「……こう?」
幸子はぎこちなくその場でターンをする。ふわりと拡がる裾は朝顔の水色のようだ。
「やっぱり、思った通りだ。君に良く似合う」
知らず、小さく息を吐く彼に彼女は頬を染めて小首を傾げる。
「ここから先はバスなんだ。乗り場はこっちだよ」
幸宏は小さい荷物を左手で持って彼女を促した。
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