【12】夏休み

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「お帰り、って? まさか……」 幸宏は彰宏に問う。 「そう、そのまさか。親父さん、帰ってきちゃったみたいだね」 「なんで! しばらく留守にするって言ってたじゃないか」 「そりゃ、俺がここにいるのと同じ理由だよ。ユキが女性を連れてくるっていうんだから。何を置いても帰ってくるだろ」 「どういう了見だよ! 誰が教えたんだ!」 「俺」 「あ」 「だからここにいるんじゃないの。何かあったら助け船出してやるよ」 ――不安だ、著しく不満だ! とっさに振り返る幸宏が見たものは、開き直り落ち着き払ってかしこまる幸子だった。目配せをして小さく頷き返す。 ごめん、気を使ったつもりがとんだやぶ蛇になった。 だらりと三角巾につられた右腕がやけに重く感じる。 幸宏は深く大きくため息をついた。
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