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 こういう空気で話しかけるのは相当な勇気がいる。相手の動向を見張り、頭の中で様々なシュミレートを完了させ、ベストな一言をかける。まるで中学生の男子が初めての告白をするように。さあ、今から声をかけるぞ。勇気を出せ。魚を探そうと声をかけるのだ!  汗をぬぐい、顔を上げ息を吸い込んだ。そして声を出す瞬間。 「あのさ……ここにいてもしょうがないから魚探そう」  高杉に先を越された。一世一代の告白を、相手に言わせてしまった。そんな敗北感。後、数秒だった。後少し早く言う事が出来れば。  悔しさを喉にしまいこみ、かわりに冷静さを装飾させた「そうだな」という言葉を返した。
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